「あなたじゃ、彼には釣り合わないよ」
結婚した当初、周りからそう言われていた。見た目も華やかじゃないし、特別な家柄でもない。
だから、彼が私に好意を持ってくれた理由が、最初はまったくわからなかった。
後になって彼から聞いた。
ある飲み会で、「結婚するならお金が大事」と話す女性たちの中で、私だけが「どんなに貧しくても支え合って生きていける人がいい」と言っていたらしい。
その言葉に惹かれたんだって。
「君なら、オレが何も持ってなくても離れていかないと思った」と。
そして、私たちは結婚した。
でも結婚してすぐ、義両親が私のことをあまり良く思っていないと感じた。
彼がもっと“見た目のいい女性”と結婚できたはず、と考えていたらしい。
当時私は会社で小さなチームのリーダーになって、収入も悪くなかった。
夫は建設現場で働きながら技術を学んでいて、収入はほぼ同じくらい。
だからこそ、余計に“気に入らない嫁”だったのかもしれない。
そんな中、夫が「独立したい」と言い出した。
最初は人を雇う余裕なんてなかったから、私は仕事を辞めて一緒にやることを決めた。
「わからないことは教えて。私も一緒にやるから」って。
最初のうちは慣れない現場や事務作業に追われて、早朝から夜まで働き詰め。
家事なんて手が回らなかったし、義両親からの視線も冷たかった。
でも夫は、何も言わず、ただ一緒に頑張ってくれた。
ある日、夫がふと「引っ越そう」と言ってくれた。
「仕事で外回りが多いから実家だと不便だし、君も少しは楽になるように」と。
それをきっかけに、私たちは二人だけの生活を始めた。
それから妊娠がわかって、でもすぐには伝えられなかった。
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